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ARAとDHAが高齢犬の痴呆症状を改善することを確認

更新:2007/11/22

サントリー(株)健康科学研究所(所長:木曽良信、大阪府三島郡島本町)は、株式会社動物エムイーリサーチセンター、共立製薬株式会社との共同研究により、痴呆症状を示す高齢犬がARA(アラキドン酸)(※1)とDHA(ドコサヘキサエン酸)を摂取することによって、加齢に伴う様々な痴呆症状や異常行動が軽減されることを明らかにした。その研究成果を第28回動物臨床医学会年次大会 (2007年11月16日〜18日、大阪市)で発表した。

発表骨子は以下のとおりです。

▼発表演題:
「高齢犬の痴呆症状に対するアラキドン酸(ARA)及びドコサヘキサエン酸 (DHA)含有サプリメントの改善効果」

▼発表者:
サントリー(株)健康科学研究所 紺谷 昌仙 ほか

【研究の背景】
近年、ペットに対する医療の進歩により、犬の高齢化が急速に進んでいますが、それに伴い、加齢による様々な痴呆症状や異常行動が問題となっています。今回、犬痴呆の診断基準をもとに、何らかの痴呆症状が認められる高齢犬が、必須脂肪酸であるARAやDHAを摂取することによってどのような影響を受けるか、その効果を検証しました。

<試験方法>
犬痴呆の診断基準100点法(※2)に従い、何らかの痴呆症状が認められた13歳以上の高齢犬10例に対して、試験カプセルを1日あたり2粒または3粒(※3)を6週間給与し(試験カプセル1粒中にARAとDHA各27mg含有)、試験カプセル給与前(0週目)、給与2、4、6週間後に、当該評価法の判定基準に基づいて獣医師が評価するとともに、採血により血漿中の脂肪酸組成の分析や血液生化学的検査を行いました。

<結果>
痴呆症状が認められる高齢犬10例の「食欲・下痢」「生活リズム」「後退行動」「歩行状態」「排泄状態」「感覚器異常」「姿勢」「鳴き声」「感情表出」「習慣行動」の各スコアの合計で表される「痴呆総スコア」は、ARA、DHA給与2週間後から改善傾向を示し、4週間後には有意に改善しました(p<0.05)。さらに6週間後もスコアが改善し、継続的に有意な効果が見られました(図1)。中でも「鳴き声」「歩行状態」の項目においては、2週間後から有意な改善効果が観察され(p<0.05)、6週間後まで継続的にスコアの改善が観察されました。また、6週間後に有意な効果の見られた「鳴き声」「歩行状態」「生活リズム」の3項目以外においても概ね改善傾向が観察されました(図2)。
 一方、血漿リン脂質中のARA組成は2週間後に有意に増加し(p<0.05)、血漿リン脂質中のARA組成と痴呆総スコアとの間には有意な負の相関が確認されました(p<0.01)(図3)。なお、血漿リン脂質中のDHA組成は給与前後で変動は認められませんでした。

※図1〜3は関連資料をご参照下さい。

<考察>
ARAとDHAを摂取することによって老化に伴う犬の痴呆症状を総合的に改善する可能性が示唆されました。また、血漿リン脂質の脂肪酸分析の結果より、摂取したARAが良好に吸収され、血漿中のARA量が増加したと考えられます。さらにARA組成と犬痴呆総スコアとの間に有意な負の相関があったことから、体内のARA量が増加することで痴呆症状が改善したことが示唆されました。これまで、加齢に伴う脳機能の低下がARA摂取で改善されることはヒトやラットで多数報告されていますが、高齢犬に対しても同様の改善が明らかとなりました。本研究の結果より、ARAやDHAをサプリメントやペットフードとして補うことによって、高齢犬の痴呆症状を効果的に改善できることが期待されます。 また、安全性においても血液生化学的検査の結果より、肝機能、腎機能、血清脂質などに影響は見られず、ヒトと同様に高齢犬に対しても安全であることが示唆されました。

※1…DHAと同様にからだの中のあらゆる組織を構成する主要な多価不飽和脂肪酸の一種。肉、卵、魚などの一般的な食材に豊富に含まれており、食事から摂取する必要がある「必須脂肪酸」の一つ。また、ARAはDHAと同様に母乳にも含まれており、乳児の成長と発育には欠かせない栄養素であることも知られています。近年、高齢者の脳の働きに非常に重要な働きを果たすことが明らかにされ、脳の栄養素の一つとして注目されています。

※2…犬痴呆の主な症状や異常行動を10項目((1)食欲・下痢、(2)生活リズム、(3)後退行動、(4)歩行状態、(5)排泄状態、(6)感覚器異常、(7)姿勢、(8)鳴き声、(9)感情表出、(10)習慣行動)に分類し100点満点で判定する犬痴呆の診断法。1997年に(株)動物エムイーリサーチセンターの内野富弥氏が考案し、犬の痴呆症状を図る方法として広く知られています。

※3…体重10kg未満の犬には2粒、体重10kg以上の犬には3粒を給与。


▼動物臨床医学会について
財団法人鳥取県動物臨床医学研究所が運営し、平成8年度より日本学術会議に学会として登録されました。毎年11月に大阪で開催され、臨床獣医学に関する基礎系、臨床系などの研究が発表され、議論されます。同財団法人は「獣医学に関する臨床的研究を行い、併せて獣医療技術の向上のための教育と知識の普及を行うことにより、動物臨床医学の発展と、さらに、人と動物の接点の探求及び動物愛護思想の啓発普及を図り、もって社会の福祉と学術の発展に寄与する」ことを目的として平成3年4月に発足しました。

▼サントリーとアラキドン酸について
サントリー(株)は京都大学との共同研究により、1985年にアラキドン酸を生産する微生物(アルピナ菌)を発見し、その後、発酵技術を用いてアラキドン酸を高濃度含有する食用油脂の製造に成功しました。その結果、動物やヒトが効率よくアラキドン酸を摂取することが可能となり、従来知られていなかったアラキドン酸の様々な効能が明らかになっています。当社は、今後も「必須脂肪酸と健康」に注目し、その栄養と機能について研究を進めていきます。

サントリー(株) http://www.suntory.co.jp/
(株)動物エムイーリサーチセンターhttp://www.me-research.jp/
共立製薬(株)http://www.kyoritsuseiyaku.com/ 

 

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